更新日 2011年 9月 26日



フェライトに巻いたコイルは、使用する周波数域で測定しないと正確な値が得られません。
マルチメーター型のLCR測定機能では1kHz - 10kHz程度の測定周波数がほとんどです。
bar-antenna.comでは公表している実測データの通り、使用する周波数域でちゃんと測定をしています。
測定周波数を変更すると、測定結果がどう変化するかテストしてみました。  


Agilent E4980A( 20Hz - 2MHz )LCRメーターで比較してみました。

 
秋葉原で購入したバー・アンテナと添付されている規格メモ

  
中波帯での比較 500kHz / 1MHz / 1.5MHz メーカーの規格に沿った測定結果です。

  

フェライトの特性が低い測定周波数まで対応していないので、測定結果はばらつきます。
特に、Q値が極端に低く表示されます。
期待していた測定結果が得られない場合は、部品そのものの不良、測定周波数の違いを考慮する必要があります。  



参考資料
重要:コイルについて、公称値と測定値の差について

1μH - 100mHのコイルは、以下の太陽誘電製を使用しています。
( 下記データは、ホームページより転載しています。)
コイル表面に印刷された公称値と測定値が異なる事があります。
その理由は、下記によるものです。

太陽誘電 LHLZ06NB 1R0 M6A34-KPDV
インダクタ 1.0μH 3.4A(max,)
インダクタンス許容差:±20% Q:20(min,)
自己共振周波数:85.0MHz(min,)
直流抵抗:0.026Ω(max,)
測定周波数:7.96MHz

太陽誘電 LHLZ06NB 100K 4A54-LPD8
インダクタ 10μH 1.7A(max,)
インダクタンス許容差:±10% Q:30(min,)
自己共振周波数:18.0MHz(min,) 
直流抵抗:0.1Ω(max,) 
測定周波数:2.52MHz

太陽誘電 LHLZ06NB 101K 4A64-KPD6
インダクタ 100μH 0.57A(max,)
インダクタンス許容差:±10% Q:20(min,)
自己共振周波数:5.6MHz(min,) 
直流抵抗:0.77Ω(max,) 
測定周波数:0.796MHz 

太陽誘電 LHLZ06NB 102 J4A74-LPDD
インダクタ 1mH 0.16A(max,)
インダクタンス許容差:±5% Q:50(min,)
自己共振周波数:1.6MHz(min,)
直流抵抗:9.5Ω(max,)
測定周波数:0.252MHz

太陽誘電 LHL06NB 103 J6A84-LPDL
インダクタ10mH 22mA(max,)
インダクタンス許容差:±5% Q:40(min,)
自己共振周波数:0.7MHz(min,)
直流抵抗:96.0Ω(max,) 
測定周波数:0.796MHz 

太陽誘電 LHLC10NB 104 J8AZC-KREM
インダクタ100mH 38mA (max,)
インダクタンス許容差:±5% Q:30(min,)
自己共振周波数:0.085MHz(min,) 
直流抵抗:240Ω(max,) 
測定周波数:( L=1kHz / Q=252kHz ) 

上記は、太陽誘電さんの測定器です。 注:ホームページより転載しています。
Qメーターは、HP 4285Aを使用しています。 bar-antenna.comも同じ機種を所有しています。
この4285Aの周波数範囲は、75kHz - 30MHzとなっています。
4262Aの周波数範囲は、
120(100)Hz, 1kHz,10kHz となっています。
測定周波数:規定周波数と記載されている様に、使用しているコイルのそれぞれの周波数で測定しています。
100mHのインダクタンスは1KHzで、Q値は252kHzで測定しています。

一方、bar-antenna.comで測定しているのはインダクタンス値とQ値は、同一周波数で行っています。
この測定周波数の差が、測定結果の差になっています。
もちろん、太陽誘電さんの規定周波数で測定すれば仕様通りの公称値となります。
製品が不良だと言う事ではなく、測定方法の差によるものであるとご理解下さい。

実際に、測定周波数の差で測定値がどうなるのか実証してみます。
測定試料は以下の100μHを使用して、1kHzと0.796MHzとの差を調べてみました。

太陽誘電 LHLZ06NB 101K 4A64-KPD6
インダクタ 100μH 0.57A(max,)
インダクタンス許容差:±10% Q:20(min,)
自己共振周波数:5.6MHz(min,) 
直流抵抗:0.77Ω(max,) 
測定周波数:0.796MHz 



インダクタンス値とQ値を1kHzで測定した結果です。
Q値は小さく、インダクタンスは2倍程度になります。


太陽誘電さんの仕様通りの規定周波数で測定した結果です。
インダクタンス許容差:±10% Q:20(min,)の規格内に問題なく収まっているのが解ります。

この事から、お使いのLCRメーターにおいても測定周波数による測定結果が大きく異なる事も予想されます。
LCRメーターの故障やコイルの不良では?と疑う前に、試料の測定条件とお使いのLCRメーターの測定周波数を
考慮してみて下さい。
特に、コイルにフェライトなどのコアを使用している物は周波数に大きく依存する事もあります。
コイルと同様に、コンデンサでも若干の差が見られる事があります。
抵抗の場合は、巻き線抵抗の様に抵抗体がコイル上になっていなければ目立った差は出ません。
測定周波数について説明書に書かれていない場合は、測定端子を周波数カウンターで測定するのも1つの方法です。


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